新建ハウジング2022年12月10日掲載記事

半世紀前のブロック造町営住宅をリノベ
消える運命のストックを地域のために “いかす

須藤建設 [北海道伊達市]

・Before・ After

戦後、 北海道で普及したコンクリートブロック造は、 公営住宅にも多く採用された。 須藤建設 (北海道伊達市) 相談役の須藤芳巳さんは、 ブロック造の元町営住宅に、 外断熱工法による性能向上リノベーションを施し、 省エネ基準相当の断熱性を付与することに成功。 “負の遺産” と化しているブロック造の住宅を、行政や大学とも連携しながら “宝の山” に変えていくための活動にも取り組み始めている。この住宅はもともと豊浦町の町営 住宅として使われていた、築48年の ブロック造長屋建てだ。 施主は、町か ら払い下げを受けて今後も住み続け たいと考え、須藤さんに相談を持ち 掛けたという。 インスペクションで確認された問 題は、床組が腐朽していた程度で、 不同沈下も見られなかった。また、耐 震性にも大きな問題はないと思われ た。「これなら費用対効果は高い」。須 藤さんはそう判断した。

■外断熱でブロックの 長寿命化図る

リノベーションの中心は断熱改修。 省エネ基準(断熱等級4)に適合する ことを目標に、仕様を決定した。 壁は、 ブロックの劣化を防ぎ、コンクリート の蓄熱効果を生かすため、 高性能グ ラスウール16K120mm厚による外断 熱工法を採用した。下部はXPSIII種b75mm厚による基 礎外断熱で、 床下には防湿シートを 敷き込みコンクリート60mm厚を打設。上部は既存の垂木に透防水シー トを張って通気層とし、300mm下に新しく垂木をかけてセルロースファイバー300mm厚を吹き込んだ。開口部は樹脂サッシにLow-Eトリ プルガラスとした。改修後のUA値 は0.38W / m2 K で BEIも0.98を達 成。C値も測定不能から2.2cm/m2ま で向上した。

・矩計図 (赤字が改修部分)

■生かすことが “いかす” 価値観を内装で示す

今回は「いかすいえ」というテーマを 設定し、 元の姿を “生かし”“いかす (かっこいい)” ものとして残すことを大 事にした。内装は一部ブロックをその まま見せ、小屋組や梁もあらわしに。「(内装は) 塗装しても良かったが、 ものを大事に残すことが“いかす”こ とだ、という価値感を提示したかった」 と須藤さんは話す。柱の位置も、腐朽 がひどかった箇所以外はそのままで、間取りも玄関と浴室以外は大きく変 えていない。長屋建てのため、隣に住戸があるが、 予算の都合上リノベはメインの居住 スペースとなる1戸のみ。将来、 もう1 戸を解体しても成り立つよう、界壁と 基礎の境界部は内側で断熱した。

平面図 (改修後)

■リノベで解体よりも 高い価値を付与

実はこの住宅は、 政策空家に指定 されていた。豊浦町では、国からの補 助金も使って、ブロック造の町営住 宅を2030年までに全て解体する10 カ年計画を立てているという。同社のある伊達市でも、10年前に ブロック造の公営住宅を解体して土 地を売りに出したが、結局ほとんどが 更地のままの状態にある。 須藤さんは、 その理由を「同じような土地はあちこ ちにある。たとえ無料だとしても(購 入する)決め手には欠ける」 と見る。ブロック造の住宅は、 北海道の文 化的遺産であり、 手しごとの痕跡も 残っている。マイナス面を、リノベー ションによって改善し、解体せずに“生 かす”ことができれば「移住・定住促 進の武器になり、人を呼び込める」可 能性さえも秘めているのだ。

左: 既存躯体 (外壁) の上に受け材を組み断熱材を施工した。
  木材のコストを抑えるため 断熱材は120mm厚に抑え、 その分基礎と屋根の断熱を強化
右: 隣戸との境壁は内断熱とし、 将来、隣を解体しても成立するようにした

ブロック造の躯体や小屋組はあえてあらわし仕上げ

■能動的に地域に関わり 地域を動かしていく

現在73歳の須藤さんは3年前、相談役就任を契機に、自身の設計事務所を設立。また、2020年には地域の 住宅事業者や室蘭工業大学の教員 らと、NPO法人住まいの相談西いぶ りを立ち上げた。これまでは地域の人々からの相談 に応じるなど、 受動的な活動が主だっ たが、今回のリノベーションは、能動 的に「地域の不動産価値を高める」 活動にも力を入れるきっかけになった。長期的視点に基づきながら、町営 住宅の利活用策を具体化していくの が当面の目標だ。国から解体費の補助が下りたもの については、解体を覆すことは極めて難しい。しかし今回の事例には行 政も注目しており「事例によって新 しい概念も提案できたし、これでス タートが切れる」 (須藤さん)。 地域な らではのストックを継承する試みとしても期待したい。


新建ハウジング2022年12月10日vol.951より転載しました。

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